炎症性腸疾患(IBD)と低亜鉛血症

低亜鉛血症については、「低亜鉛血症とは」をご覧ください。

IBD患者では血清亜鉛濃度がしばしば低値であり、Sivaら(2017年)は潰瘍性大腸炎(UC)において223例中86例(38.6%)、クローン病(CD)では773例中326例(42.2%)がそれぞれ低亜鉛血症(血清亜鉛濃度66µg/dL未満※)を合併していることを報告しています1)。亜鉛の主な吸収部位は十二指腸および空腸であり、消化管の炎症や腸管切除術の既往により、亜鉛の腸管での吸収が低下すると考えられています2)
また、低亜鉛血症を伴うIBD患者は、血清亜鉛濃度が正常な患者に比べ、入院、手術および合併症のリスクが高いことが報告されています(図1)。
※日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針」においては、基準範囲を80~130µg/dLとすることが適切であり、60~80µg/dL未満を潜在性亜鉛欠乏、60µg/dL未満を亜鉛欠乏としている。

図1:低亜鉛血症(血清亜鉛濃度66µg/dL未満)を伴うIBD患者のイベント発生リスク

【対象】IBD患者996例 [CD 773例、UC 223例]
【方法】血清亜鉛濃度を少なくとも2回以上測定した対象患者を、低亜鉛血症群(血清亜鉛濃度<66μg/dL)と血清亜鉛濃度正常群(血清亜鉛濃度≧66μg/dL)に分けて経過観察(中央値:3年間)し、IBDに関連した手術、入院、合併症の発生リスクを比較する。
【評価項目】IBDに関連した入院、手術(ストーマ、回腸嚢の増設の有無によらない外科的手術)、合併症(栄養失調、脱水、貧血、出血、腸閉塞、瘻孔、膿瘍、結腸狭窄)の発生リスク等。
【検定方法】多変量解析(多重ロジスティック回帰分析)。
多変量解析は、単変量解析においてP<0.15であった検討項目を共変量とし、多重ロジスティック回帰分析を用いて行った。

亜鉛と下痢

日本臨床栄養学会より発表された「亜鉛欠乏症の診療指針」において、亜鉛欠乏の病態として下痢が取り上げられています3)。著明な亜鉛不足では下痢を合併し、亜鉛不足は腸管でのイオン輸送や腸管粘膜透過性に影響をおよぼすことが原因と考えられています。
亜鉛不足や栄養状態の不良な地域において、下痢に対する亜鉛投与の有効性が期待されるとするコクラン共同研究のシステマティックレビューが発表されており4)、世界保健機構およびユニセフでは、小児期の急性下痢症の治療に短期の亜鉛補充を推奨しています5)

腸管粘膜透過性亢進“Leaky Gut”

腸管の上皮細胞は栄養素を吸収する役割を担う一方で、上皮細胞間にはタイトジャンクションが存在し、微生物などの有害物質の侵入を防ぐバリア機能も担っています。このバリア機能が破綻すると腸管粘膜透過性が亢進し、いわゆる“Leaky gut syndrome(リーキーガット症候群)”が生じます6)。IBD患者では腸管粘膜透過性が亢進していることが報告されており7)、クローン病の再燃や内視鏡的に粘膜傷害が治癒状態にあるIBD患者の腹部症状の発現に関与しています8-9)
腸管粘膜のバリア機能として、タイトジャンクションにより形成される細胞間密着構造があります。ヒト腸上皮細胞株(Caco-2細胞)を亜鉛欠乏状態で培養することによりタイトジャンクションの構成蛋白であるZO-1およびOccludinの発現が低下することが認められています(図2)10)

図2:亜鉛欠乏状態におけるタイトジャンクション構成蛋白の発現低下(in vitro)

【方法】Caco-2細胞(ヒト腸上皮細胞株)を通常培地および亜鉛欠乏培地で培養し、タイトジャンクション(TJ)構成蛋白の局在および発現量を評価。TJ構成蛋白のOccludinとZO-1の局在は蛍光免疫染色法で観察し、発現量はWestern blot法を用い評価した。
【検定方法】一元配置分散分析


1) Siva S et al. Inflamm Bowel Dis. 2017; 23(1): 152-157
2) 高木 洋二ほか. 最新医学 1990; 45(4): 678-683
3) 児玉 浩子ほか. 日本臨床栄養学会雑誌 2016; 38(2): 104-148
4) Lazzerini M et al. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Dec 20; 12: CD005436
5) World Health Organization and United Nations Children Fund. Clinical management of acute diarrhoea. WHO/UNICEF Joint Statement, August, 2004. [http://www.unicef.org/nutrition/files/ENAcute_Diarrhoea_reprint.pdf]
6) 越川 頼光ほか. GI Research 2015; 23(3): 507-513
7) Honzawa Y et al. Inflamm Bowel Dis 2011; 17(2): E23-E25
8) Tibble JA et al. Gastroenterology 2000; 119(1): 15-22
9) Chang J et al. Gastroenterology 2017; 153(3): 723-731
10) Albert F et al. J Nutr 2008; 138: 1664-1670

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