肝臓と低亜鉛血症

肝臓と低亜鉛血症

低亜鉛血症については、「低亜鉛血症とは」をご覧ください。

肝硬変患者における亜鉛不足1)

肝硬変患者では血中アルブミン濃度の低下により、血中でアミノ酸と結合する亜鉛が増加します。アミノ酸と結合した亜鉛は尿中へ排泄されるため、亜鉛の尿中排泄が増加します。また、肝硬変患者では食欲不振による摂取量の低下、あるいは消化管からの吸収の低下により、亜鉛不足状態になっています。亜鉛不足が肝硬変にみられる窒素代謝異常や線維化などに関与していると考えられています。

亜鉛不足による窒素代謝異常1),2)

慢性肝疾患患者では、血清亜鉛濃度と一連の窒素代謝の指標(血清アンモニア濃度、フィッシャー比*1、血中アルブミン値)の間に相関がみられます(図1)。体内において、アミノ酸代謝により生じたアンモニアは、主として肝臓の尿素回路で尿素に変換されることによって無毒化されますが、ここには作用発現に亜鉛を含有する酵素がかかわっており、亜鉛が不足するとその処理が低下します(図2)。アンモニアは骨格筋のグルタミン合成系でも処理されるため、慢性肝疾患のように肝臓で処理しきれないアンモニアが増えると、その分のアンモニアをグルタミン合成系が処理しますが、グルタミン代謝もまたアンモニアを産生しますので、血清アンモニア濃度の低下はみられません。この結果、窒素代謝異常(高アンモニア血症など)が引き起こされ、アンモニアによって肝性脳症が引き起こされます。また、グルタミン合成系ではBCAA(分岐鎖アミノ酸*2)の消費が増加するため、フィッシャー比が低下します。このアミノ酸インバランスによって低アルブミン血症が引き起こされますので、これを改善するためにBCAAが投与されますが、BCAA投与によってグルタミン合成系の活性化が起こります。このような一連の窒素代謝異常を改善するためには、尿素回路の機能を回復させることが重要で、そのためには亜鉛低下を是正する必要があります。

*1: BCAAとAAA(フェニルアラニン、チロシン)の比
*2: バリン、ロイシン、イソロイシン

図1 血清亜鉛濃度と窒素代謝指標1)

図1: 肝臓と低亜鉛

図2 アンモニア代謝経路1)

図2肝臓と低亜鉛

尿素回路:アンモニアは尿素回路で尿素へ変換される。この回路を触媒する酵素OTCは亜鉛含有酵素であり、亜鉛不足が起こるとアンモニアの処理が低下する。 グルタミン合成系:アンモニアをグルタミン酸が取り込みグルタミンを合成することでアンモニアが処理されるが、グルタミンも代謝の際にアンモニアを産生する。グルタミン合成系では、BCAAの消費が増加するため、フィッシャー比が低下し、アミノ酸インバランスが起き、低アルブミン血症が引き起こされる。

亜鉛補充療法による治療効果

片山らは高アンモニア血症を呈する肝硬変患者(日本人)における亜鉛製剤の有効性を検討する無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験3)を行っています。本試験では亜鉛補充療法によって、血清アンモニアが低下することが示されました。

肝硬変患者に硫酸亜鉛を投与注)することによってナンバーコネクションテストなどの脳症の指標が改善し、同時に窒素代謝が改善することについて、Marchesini4)の報告があります。

肝硬変におけるBCAA投与は低アルブミン血症や生命予後を改善させるとして知られていますが5)、BCAAそのものは窒素負荷になるため、アンモニア低下作用をもつものではありません。前述の「亜鉛不足による窒素代謝異常」に示したように、亜鉛不足状態では尿素回路がしっかり回っていないと考えられます。片山ら6)は肝硬変患者にBCAA投与に亜鉛の併用を検討し、BCAA単独投与と比較し、血清アンモニア濃度の有意な低下(図3)やフィッシャー比の有意な上昇(図4)といった窒素代謝障害の改善が観察されたと報告しています。

注)国内において「低亜鉛血症」に適応を有する亜鉛製剤はノベルジン®錠のみです。

図3 BCAA+亜鉛併用療法による血清アンモニア濃度の低下6)

図3肝臓と低亜鉛血症

図4 BCAA+亜鉛併用療法によるフィッシャー比の上昇6)

図4 肝臓と低亜鉛血症

(試験概要:片山らの高アンモニア血症を呈する肝硬変患者(日本人)対象無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験)
目的:肝硬変における窒素代謝異常を改善する2つの方法、BCAA投与とBCAA+亜鉛併用投与について検討する。

対象:血中アルブミン濃度が3.5g/dL以下、血清亜鉛濃度が70μg/dL以下の肝硬変患者40例 (BCAA単独群21例、BCAA+硫酸亜鉛併用群19例)

試験デザイン:無作為化プラセボ対照二重盲検多施設共同比較試験

方法:対象をBCAA単独群またはBCAA+硫酸亜鉛併用群に無作為割り付けし、BCAA 4g、L-イソロイシン952mg、L-ロイシン1904mgおよびL-バリン1144mgを各食事の後に経口投与する。亜鉛は、血清亜鉛濃度50μg/ dL未満の患者には、1回の食事後に硫酸亜鉛600mg /日、50?70μg/ dLの患者には朝食後200mg /日を投与する。

評価方法:外来で10週ごとに追跡をおこない、5-6か月間の追跡による投与前後の血中アルブミン濃度、フィッシャー比、血清アンモニア濃度を比較検討する。

また、片山らは肝硬変患者にBCAAと亜鉛製剤を長期に投与した際、血清亜鉛濃度がある程度一定濃度以上(80μg/dL以上)に保持されることが、無癌生存(Cancer-free survival) に影響を与えること(p=0.0432、log-rank検定)を報告しています7)。


1) 片山 和宏:医学のあゆみ 240(9): 759-764, 2012.一部改変
2) 片山 和宏:日本臨牀 74(7): 1126-1131, 2016.
3) Katayama K, et al.: Nutrition 30: 1409-1414, 2014.
4) Marchesini G, et al:Hepatology 23: 1084-1092, 1996.
5) Mito Y, et al.: Clin Gastroenterol Hepatol, 3: 705-713, 2005.
6) Hayashi M, et al: Hepatol Res, 37: 615-619, 2007.
7) Katayama K, et al: Open J Gastroenterol, 1: 22-28, 2011.

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